4期生 卒業論文/5期生 プレ卒業論文
【4期生・5期生 卒業論文・プレ卒業論文 巻頭言】
「情報生産者になる」。これは私が自らに課したゼミの教育目標です。また、課題図書の題名 でもあります。私は著者である上野千鶴子氏の、大学は(しいてつとめる)勉強をするところで はなく(まなんで問う)学問をする場であるとの主張に大賛成です。
もちろん、正解のある問いを知ることも大事です。しかし、それにとどまってはいけません。大 学では、まだ答えがない問いを立て、みずからその問いを探求する実力を身につけ、その醍 醐味を体験する場でなければならないと思います。とりわけ、金城ゼミの卒業生には、知恵の ある情報を生産する知的体力のある「知的生産者」になって欲しいと願っています。
残念ながら、日本の大学はこのような教育を長らく怠ってきました。日本人の大半は、大学で (問いをきわめる)研究という経験をしていません。それが、この 25 年間、日本の個人所得が 上昇していない根本的な原因です。一昔前と大きく異なり、今日の日本は先進国で最も経済 的に貧しい国です。知的な営みが富の源泉となる時代になったにもかかわらず、その素養を 欠く「社会人」を大量に供給した当然の帰結です。世界に目を向ければ日本の経営者やサラ リーマンの知的水準は、驚くほど低いのです。新聞に、経営者が恥ずかしげもなくハウツー本 や大衆小説を座右の書として堂々とあげる国は珍しいでしょう。
答えが判明している問いを教員が立て、それを教えるのは楽です。しかし、それでは知的生 産者は育ちません。教員は、研究者としての学生のプロデューサー、編集者、伴走者として、 一緒に試行錯誤しなければならないと思います。知的生産者には、経験に基づいた経営能力 も必要です。ゼミの運営も学生にお任せしているのも同じ理由からです。
問いを立て、それをきわめる研究という営みは大学で終わりません。知的生産は一生続ける ものです。しかし、働きながら知的生産者であり続けることは難しいです。仲間が必要です。私 が人生の後半で会社員から大学教授になれたのは、そのような仲間に恵まれたからです。私 も生きている限り、みなさんと伴走します。さまざまな共同体が崩れていく中、気兼ねなく楽し く、多くの仲間と集える共同体としてのゼミの意義は大きいと思います。
ゼミを通して 21 世紀を生きる実力を備えられたみなさんと、卒業後も同窓会でお目にかか れることを楽しみにしています。
令和2年1月吉日 金城 亜紀
【4期生 卒業論文テーマ】
『多角化を促進するコーポレート・ガバナンス』
『韓国型コーポレートガバナンスとは何か』
『ブリヂストンの企業経営から見るガバナンス改革』
『安田財閥における株式会社制度の確立と変遷』
『メディア史から見る YouTube と YouTube の社会的影響
『経営史から見る岩崎彌太郎の西洋複式簿記導入』
『帝国ホテルと3人の発起人』
『経営の多角化研究 ~三菱とキヤノンの事例から~』
『多角化経営からみる資産管理業務の研究』
『ミス・シセイドウに見る我が国における対面販売の成立』
『コーポレートキャラクターの市場への訴求』
【5期生 プレ卒業論文テーマ】
『生糸売込商人が日本の近代化において果たした役割』
『倉庫業にみる江戸と明治の連続・非連続』
『川崎正蔵に見る富の形成方法』
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