2期生 プレ卒業論文
【2期生 プレ卒業論文 巻頭言】
本年より当ゼミでは本格的に経営史に取組むことになりました。プレ卒論も、教科書『企業家に学ぶ日本経営史』(有斐閣ブックス)で学んだ企業家を対象に、チームで研究・執筆していただきました。様々なドラマがあったかもしれませんが、どのチームも分裂することなく、お互いに協力して成果物を締切りまでに提出していただき、ありがとうございました。
この体験を通して、「研究は面白い(面白いかもしれない)」、と感じていただければ研究仲間としてこれほど嬉しいことはありません。研究は楽しいことばかりではありませんが、とてつもなく面白いと断言できます。
プレ卒論の対象となった経営者に共通する特徴は何でしょうか?3名とも生い立ちには必ずしも恵まれず、始めた事業環境は逆境に近く、何度も挫折しています。その上で、莫大な利益を生む独自の仕組みをつくり、現代においても含蓄に富む思想や精神を確立しています。性格も複雑怪奇、矛盾に満ちて一筋縄ではいきません。奇人変人でなければ、経営者(や研究者)は歴史に名を遺せません。そういう方々を対象として執筆するのが容易でないのは当然です。
チーム1は、日本の近代産業と並行して発展した在来産業の革新者である、郡是製糸の波多野鶴吉について研究しました。同社の創業から現代までの軌跡を多面的に分析した力作です。経営史で見落とされがちな「女性」、「意識」、「倫理」などの側面にも勇気をもって切り込んでいる点が特筆されます。
チーム2は、軽工業分野における大企業の形成過程で日本の専門経営者の先駆者として活躍した、武藤山治を掘り下げました。着眼点が鋭いだけに、社史を含む原史料を活用し、出典を明示しながらもう少し丁寧な分析があれば、より説得力のある作品になったと惜しまれます。
チーム3は、都市化が進展し出現した新しい中間層をターゲットに次々と新しいビジネスを創出した阪急電鉄の小林一三に取組みました。多角経営のそれぞれの柱を丁寧に解析した労作です。チーム1と同様、現地に赴きフィールドワークを行った成果でしょう。
ゼミの最終年度も引き続き主体的かつ積極的に勉学はもちろん、多方面に活動されてください。来年度も、皆さんと共に学び切磋琢磨しながら、一緒に良いゼミを作っていくことを楽しみにしています。
【テーマ】
『波多野鶴吉から読み解く会社経営と工女教育 一グンゼ株式会社の設立・発展を通して一 』
『専門経営者としての武藤山治』
『「消費者」主体の時代の到来 一小林一三から見るサービス産業の在り方一 』
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