2期生 卒業論文/3期生 プレ卒業論文
【2期生・3期生 卒業論文・プレ卒業論文 巻頭言】
金城ゼミ第二期生の卒業論文と第三期生のプレ卒論を束ねた本論集が刊行されたことを大変 嬉しく思います。本年度から、ゼミのテーマを経営史に絞り、4年生は各人で、3年生は三つ のチームに分かれて研究を重ね、その成果が形になりました。どの作品も筆者の問題意識と個性が反映された立派な労作です。執筆は大変だったと思います。なぜ、本ゼミでは学生が自ら論文を執筆することを重視しているのでしょうか。それは、皆さんに「自ら意味を生み出す力」(1)を、大学を卒業するまでに、ぜひとも取得していただきたいからです。
現代社会には、 「私らしくありたい」 、 「人と労せずにつながりたい」という私たちの欲望を市場のニーズにすり替える仕組みが多く存在します。インターネットを通してリアルタイムで膨大なデータを蓄積し、 「私」が何を望んでいるかを解析するアルゴリズムが高度化しています。欲望の企画化が進展し、私たちは思考そのものをコンピューターに丸投げする誘惑にさらされています。こうして「本当の自分」 、 「私らしさ」を求める人に、たくみに商品が供給され、消費されていきます。人々はますます自分らしさを失っていき、予定通りに思考し行動する、市場の奴隷となりつつあるといっても過言ではありません。恐ろしいことに、その事実にすら気 がついていない場合も多いのです(2)。人工知能の急速な発達により、この流れは加速化するでしょう。
私たちは、 「自ら意味を生み出す力」を市場が奪うことに躍起なハイパーインダストリアル時代に生きているのです。そうであればこそ、大学で真に学ぶ意義が大きいのです。とりわけ、自分で加工されていない原石を発掘し、それを磨いて宝石にする経験が大切になります。それは、皆さんが実践された、分からないなりにも自分で問いを立て、悪天候にもめげずに現場に足を運んだ体験です。意味が良く分からない古文書をひも解き、難しい先行研究を理解し、辛辣なコメントにも耐える。その上で、推敲を重ね、何とか最後まで論文を書き上げるという地道な作業が貴重なのです。
あなた自身の独自でアナログな体験から、データ化された加工情報からは得られない思考が生まれます。その結果、人工知能では導くことのできない意味を、あなた自身が生み出すこと ができるのです。このような「自由な時間」(3)をこれからも大切にされ、良き人生を歩まれることを切に願います。
2018年1月吉日 金城亜紀
(1) BernardStieglerという哲学者が提唱。詳しくは、 『象徴の貧困 1 ハイパーインダスト リアルな時代』2006年 新評論、を参照。
(2 )アメリカ人が仕事以外で毎日平均2600回もスマホの画面をタップしているとの調査があります。TheEconomist,Nov .4th-10 th 2017issue.
(3 )ラテン語でotiumという。休息やレジャーのための時間ではなく、教養を身につけ、よりよい存在をめざすための自由時間、 自由な者になるための時間のこと。
【2期生 卒業論文テーマ】
『論理的思考に基づく経営 〜宅急便の父・小倉昌男をケーススタディとして〜』
『阪急と東急の電鉄経営の比較 五島慶太のまちづくりは小林モデルの模倣か』
『松下幸之助にみる経営理念の真価とは ~経営における倫理の役割~』
『なぜ今日本ではベンチャー経営者育成が必要なのか ‐大正自由教育者 羽仁もと子から学ぶ現代教育のあり方‐』
『歴史と伝統から信頼を得る日本の二大ホテル ~帝国ホテルとホテルオークラ~』
『グンゼに見る会社の形態』
『製品デザイン時における経験価値の導入の重要性 ~Appleのデザイン戦略への取り組みの事例から~』
『株式会社経営における共同経営の部分的活用の有効性 ~グンゼ株式会社と本田技研工業株式会社を通じて~』
『呉服屋から世界の百貨店へ ~伊勢丹の歩み~』
『日本的家族経営の比較 二代茂木啓三郎・武藤山治を通して』
『社内報の必要性とは ―武藤山治から見る社内報の必要性―』
『鉄道王 五島慶太の長期的経営 ‐専門経営者 武藤山治との経営比較を織り交ぜて‐』
『三菱グループの歴史から見る、事業承継の在り方と重要性』
【3期生 プレ卒業論文テーマ】
『先駆的なマーケティング 前代未聞の商品、味の素をどのように販売してきたのか』
『経営とは ―武藤山治が築いた経営在り方―』
『日立製作所の歴史 企業にとっての創業理念変換の必要性』
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